蓋をあけると、心地いい香りが漂う。この日のお椀は、酒塩でマリネした鰆とクレソン、黄柚子。 吸い地を一口含むと、何だろう?鰹と昆布の澄んだ淡味に、初めて出会う深い旨味を感じる。
「この吸い地、僕は鰹コンソメと呼んでいます。 鰹と昆布のおだしに炒めた牛挽肉や香味野菜を浸し、香りと旨味を移したもの。こうすることで、おだしにフレンチのコンソメのおいしさがとけ合うんです」
東京ミッドタウンの美しい庭園に望む「HAL YAMASHITA 東京本店」オーナーシェフの山下春幸さんはこう話す。
世界の一流シェフが集うワールドグルメサミットで、最高位のベストシェフに選ばれた実績も持つ。 山下シェフの料理は、和食を進化させた新和食と言われる。ただその新和食は、いわゆる折衷料理や創作料理とは明らかに違う。
大切にするのは、原点とプロセスだ。鰹節や昆布はどのように生まれ、なぜ和食のだしになったのか?発酵とは? 旨味とは?
食文化の歴史を遡り、当たり前と片づけられてきた常識や調理法を科学的に検証する。その上で時に大胆に、あるいは繊細に、和食のおいしさを現代の味覚に合わせて再構築してきた。
そんな山下シェフが〝料理元素〟と呼び、大切にするのが水だ。
「僕にとって水は一つの食材であり、調味料。おだしはまさに水が主役で、食材そのもの。調味料としては、生のままの水と一度加熱した湯冷ましを使い分けます」
スペシャリテである雲丹巻きのソースでは、柚子の搾り汁とだし、生醤油に生のままの水を合わせることでなじみすぎず、それぞれの味が立体的に生きてくるという。
そんな山下シェフが愛用するのが、シーガルフォーだ。
「日本の水道水は、世界的に見てかなりいい。その水を、味に関わるミネラルは除かず、安全な水にしてくれる。日本の水を生かす最も適切な方法がシーガルフォーです。味覚的にも、経済的にもね」
独自のスタイルで、常に和食の新しいおいしさを味わわせてくれる「HAL YAMASHITA」
しかも「『普通に旨い』と気軽に楽しんでいただくのが一番」と話す山下シェフの言葉を聞くと、この店が愛される理由がよくわかる。
東京都港区赤坂9-7-4
東京ミッドタウン ガーデンテラス1F
TEL:03-5413-0086
営業時間/11:00~15:00、17:30~24:00
※営業時間・定休日は変更になる場合があります。ご来店時は、事前に電話でご確認ください。